10の美しい『地図』から学ぶビジュアルデザインと構図のアイデア

cartography

効果的なデザインが、時に意外なところで見られる場合があります。時にそれは昔の作品に隠されていることもあるでしょう。

優れた視覚的コミュニケーションの要素は普遍的なものですので、昔のデザインが優れたデザインであると再評価されるのは決して珍しいことではありません。現在でも、私たちは最古のグラフィックデザインから貴重な学びを得ることができるのです。

カートグラフィ(地図作成法)はそうした例のひとつです。情報や色、寸法などのバランスを上手に取らなければ、優れた地図とは言えないからです。

 

Antique map by Nicolaas J. Visscher

この記事では、地図作成技術という太古のアートから学びを深めていきましょう。以下、水彩画から3Dのものまで、10の美しい地図を集めました。

01. ネガティブスペースで強調する

ネガティブスペースの定義は、『デザインの注目するべき点の周囲のスペース』であるとされています。ネガティブスペースは、主なオブジェクトやシルエットを強調したり、あるいは作り出したりするために用いられる要素のうちのひとつなのです。

メインとなる対象(ポジティブスペース)に注意を向かせるのに通常用いられるのは陰影です。デザインのこの原則は、見る人の目線をデザインが主に伝えたい対象へと誘導し、その内容を最大限伝える上で非常に重要であると言えます。

全体にとって、ネガティブスペースは『目を休める場所』となります。これのおかげで、見る人はその情報量に圧倒されずに済むのです。

地図においては、海や池などがネガティブスペースとして配置されるのが常です。

 

Lauren Wargo

上の例はLauren Wargoによる水彩画の地図の傑作で、海をネガティブスペースに配置することで陸地を目立たせることに成功しています。ただ陸地だけを書き出すよりも目が休まる場所が与えられることで、より効果的な地図となっているのです。

続いての例はシンプルな地理的地図で、濃い色と白でバランスを取りながら、街の複雑さを表しているものです。

 

Armelle Caron

また、アフリカ大陸をデザインに用いたTang Yau Hoongの作品も注目に値します。このデザインでは、動物のシルエットを用いることで地図の輪郭を描き出しているのです。そしてこの大陸に色を添えているのがアフリカの日没の色というところもポジティブスペースに意味合いを与える要素となっており、ネガティブスペースのデザイン的な特徴ともバランスが取れています。

 

Tang Yau Hoong

02. 色が何を連想させるかを利用して分かりやすく

色には多くの人が共通して抱く連想するものがあり、それゆえにデザイナーにとって有効なツールとなります。

特に親しみの強い色を用いる時には、その色からの連想と情報のリンクはほぼ一瞬で行われます。これにより、細々と情報を付与しなくても何を示しているのかが伝わりやすくなるのです。

例えば地図の場合、水辺は青、土地部は緑を使えば間違いないでしょう。以下の公園の地図の例を見てみると、クラシックなブルーとグリーンの配色により、どこが歩ける場所なのかが一目瞭然になっています。同時に、ブルーとグリーンに対して目立つ赤で注釈を入れることにより、重要なエリアが分かりやすくもなっているのです。

Veronika Chenkus

次に、以下の地図の色使いに注目してみましょう。この例でも赤色が使われています。これは、赤色は通常、『重要なもの』が連想される色だからです。この地図における赤色は、特定の建物やエリアを表すのに用いられています。

 

fwdesign

続いての地図を見てみると、パステルカラーのグリーンが用いられています(この地図はある物語の架空の街のものです)。モノクロ的なトーンの配色になっており、陸地部分がネガティブスペースで示されています。道や木々、山脈は、ネガティブスペースに近い色合いで表されています。

これにより、目線はBlack Lakeと書かれている場所にぐんと引き寄せられることになります。このBlack Lakeこそ、物語において重要な役割を持つ場所だからです。

 

Fallon Venable

03. タイポグラフィによりデザインに個性を加える

タイポグラフィを駆使することで、デザインに様々な個性を与えることが可能です。どのような文字を使うかにより、デザインは生かされもしますし殺されもするのです。フォントが違うだけで、その他は完璧なデザインも調子外れな印象になってしまいます。

タイポグラフィが特に地図において重要なのは、その場所が何なのかが文字として読めなければならないからです。より装飾の強い地図の場合、適切なフォントを用いることができればデザインの質を上げて個性的なものにすることができるでしょう。

ゲーム・オブ・スローンズで用いられている地図を見てみると、中つ国(トールキンの世界観)のスタイルの文字を用いることで、物語の舞台にぴったりのフォントの視覚的効果を得ることに成功しています。

Kitkat Pecson

Wisconsinの以下のマップを見てみると、中西部の少し砕けたスタイルのフォントを用いることで、デザインに背景的な情報を加えています。池の部分におけるネガティブスペースとフォントの使い方も実に見事です。

Michael Mullen

最後に、文字だけで作られた日本列島の地図を見てみましょう。ここで用いられているフォントは伝統的なカリグラフィに着想を得たもので、日本の文化と歴史に敬意を表すものです。

James McDonald

04. ミニマル的要素で、コンテンポラリーかつ分かりやすいデザインに

日常生活におけるガイドの役割を果たす地図は、情報が分かりやすく伝わるものでなければなりません。その上で見た目として飽きが来ないものである必要があるのです。

そこでシンプルなデザインやミニマル的デザインが活躍します。地図の主な役割との相性も抜群で、美しくかつ見て分かりやすい地図が生まれるのです。

以下の例を見てみると、洗練されたシンプルなマップの中、ネガティブスペースと最小限の枠取りを用いることで、見る人も地図が示す目的地を理解しやすい構造になっています。

Canteen

次の地図はニューヨークのもので、シンプルな図形とミニマル的な色使いを用いています。ネガティブスペースは水辺と道を表しており、全体が散らかった印象になることを避けています。

Jazzberry Blue

続いての例は大きなブロックを用いて世界地図を描き出しています。様々な色のブロックを用いながら、私たちが知る世界地図と関連づけることで全体のデザインを成り立たせているのです。

Michael Tompsett

05. 三次元的に表現する

平凡なデザインを避ける方法には様々なやり方がありますが、そのうちのひとつがデザインを三次元的に捉えることです。

通常、地図と言えば二次元的(平面)に描かれるものです。しかしそこに三次元的な要素を加えることで、一気に特別なデザインに早変わりするのです。

以下のマップは文字通り3Dにカラフルな地図を作り、飛び出る要素を加えながら見た目にリッチな印象を与えています。

 

Antoni Yudisco

続いての地図は、垂直的に区域を俯瞰した様子を示しており、これもまた印象的で分かりやすいデザインになっています。

 

Jack Shulze & Matt Webb

そして次の地図では、よくある『地図の色』を用いていますが、同時に建物を立体的に描くことで面白い効果を生んでいます。

 

Katherine Baxter

06. 拡大・縮小してみる

ズームアップしたりズームアウトしたりすることで、デザインの特定の場所に注目させたり、逆に重要でない部分を目立たなくしたりすることができます。

地図という素材の場合は拡大・縮小の際に縮尺が適切でなければいけないので、より注意が必要です。一方、地図の特定の場所やエリアを拡大して見せるといった場合には有効でもあります。

以下の地図では、大きなインド洋とその他東南アジアと隣り合っていることで、タイの大きさが強調されています。また、左上に世界地図を載せることで、地球規模でタイがどこに位置しているかも同時に示しているのです。

 

Chinapat Yeukprasert

また、次の例を見てみると、町中におけるスタジアムや山などといった特徴的な要素が拡大されて表示されていることがわかります。

 

Aldo Crusher

上の例と似ていますが、以下のベトナムの地図も象徴的なロケーションを強調するのに拡大する手法を用いています。

Stuart Holmes

07. 線画で重要なところだけを目立たせる

線画はデザインにおける基本的な手法であり、カートグラフィにおいては特に重要な要素です。更に、例えば電車の乗り換えや道案内などの特定のディテールを説明しなければいけない場合には適切な線画が求められます。

東京の交通網を示した以下の例は、線画というものがいかに素晴らしいデザインに成り得るかを示している一例であると言えるでしょう。

 

Cayla Ferari & John Breznicky

以下の地図はデザインの主な要素として線画だけを用いながら、様々な情報を伝えることに成功しています。点線で区切られているエリアはハイキングコースを示しているのです。

Travis Ladue

ネガティブスペースを大胆に活用しながらミニマリズムを体現した例として先の東京の交通網の他に以下のローマの交通網の例も参考になるでしょう。

Cayla Ferari & John Breznicky

08. イラストのスタイルを統一することでバックグラウンドを伝える

イラストのスタイルを合わせると地図全体に統一感が生まれ、全体でひとつの絵を作り出すことに繋がります。伝えたい雰囲気や見た目に合わせてイラストを載せることで、最終的な完成も調和が取れたものになるでしょう。

以下の例では、象徴的な建物やフォント、そしてそれらの要素を囲む円に至るまで、全体のスタイルが統一されています。

Anna Bond

また、以下のアムステルダムの例でも、同じようにスタイルが統一されていることを確認できるでしょう。

 

Anna Bond

続いての例では、色使いや配色を限定的な数でまとめることで統一性を生み出しています。

Stuart Hill

09. 深みや新たな触感のために質感(テクスチャー)を工夫する

質感を工夫すれば、様々な情報を伝えながらデザインにエネルギーとダイナミズムを与えることもできます。質感をレイヤー的に配置するのも良い方法です。

例えば以下の地図では、ちょっとした質感を加えることで、どこが陸地になっているのかが分かりやすく、かつユニークな形で表現されています。

Chiara Alduini

よりシンプルな例として、以下のカリフォルニアの地図では線を引きながら勾配をつけることで深さと質感を生み出しています。

 

Neil Stevens

ハンガーゲームの地図を見てみると、少し汚したような質感を加えることで個性的かつエネルギッシュな雰囲気が生まれています。

Rachel Ignotofsky

10. 親しみのあるイメージを用いることでオーディエンスと繋がる

図解するように示すことで、デザインのバックグラウンドが分かりやすくなる場合もあります。例えばロンドンの公衆電話やエジプトのピラミッドのような象徴的なイメージを用いれば、それが何を表しているのかを分かりやすく連想させることができます。

例として以下の地図を見てみると、ヨガや猿の住む森といったような世界的に知られた特徴が描かれており、これがバリ島であることが分かりやすくなっています。

Wesley Robins

続いて以下のイギリスの地図では、ビートルズやロンドンの赤バスなど、様々なアイコンが詰め込まれています。

Aleksandra & Daniel Mizielinscy

オーストリアのザルツブルクのある地図はダイナミックな構図で描かれており、更にオーストラリアの有名なものが詰め込まれています。

Dana Jung

まとめ

素晴らしい地図の傑作の数々とそこからの学びを得た私たちが覚えておくべきことは、私たちの周りには示唆に富むデザインが溢れていて、それは時に意外なところから見つかることもあるということです。色々な所に目を向けて、更なるデザインのヒントを見つけていきましょう。

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