雑誌の表紙をデザインする上での重要な目的として、見た人の注意を引いて購入してもらうことと、その内容やテーマを表現することのふたつが挙げられます。このふたつの目的を達成できるような表紙のデザインを考える上で、雑誌の表紙をデザインするということは、それだけで独立した技術であると言えるでしょう。
他とは一線を画したそのようなデザインをするために必要なことは、競合を研究し、違う色を出していけるようにすることです。非凡で他にはなく、目立つようなデザインを生み出しましょう。それと同時に、その雑誌の内容やテーマを表現することもお忘れ無く。
以下には、そんな雑誌デザインを学ぶ上での50の好例を集めました。一撃が強烈な、他とは違うデザインから学んでみましょう。
例えばこの雑誌、Little White Liesでは、ブラックスワンを特集した回にその内容を雑誌名以上に大きく掲載しています。その上でナタリー・ポートマンの白黒のイラストとデザインのバランスを取っていて、インパクトの強い見た目でありながら同時に美しくもなっているのです。
Blendのこの表紙は、その号の内容をど真ん中に配置し、それと同時に女性の画像を再度に分けて配置することで、他の雑誌と大きく見た目を異にしています。
New York Times Magazineの例を見てみると、『彼らが生きた人生』というテーマを表現するため、敢えて『この後車が見えなくなる』アングルからの画を使っています。
Columbus Monthlyは、『コロンバス産のもの』を特集する回で、レーザーカットを用いてストリートマップを作りました。全体としてグレーの色合いにバックグラウンドのピンクを用いることで、立体感や影、コントラストが生まれています。
Audubon'sの表紙では、鳥が羽ばたく瞬間をグリッドにして表示しています。色や動きを最小限の要素で伝えることに成功しているのです。
Orange Is the New Blackで活躍するUzo Adubaを大胆にそのまま表紙にしてしまったのがMartin Schoeller、そしてStylist誌です。とても印象的な表情が魅力的で、かつ躍動感をも感じさせてくれます。
No Cigarのこの表紙は、モデルの上に透明な図形を配置し、そこにだけ色をつけるという手法を用いています。全体のムードを損なうことなく、ただ美しさだけが表現されています。
Vogueのこの号では、Jessica Fecteauにより、モデルの手と顔の境を曖昧にするようなデザインが試されることとなりました。このフェイスペイントは実際にはデジタルで後付されたものですが、本当のフェイスペイントのようでもありますし、その色は雑誌のタイトルとも合致しています。
Washington Post Magazineの表紙では、紙に切り込みを入れてそこを丸めて内側を見せる、という手法によって雑誌のテーマをも同時に表現しました。
フェミニンすぎるのではないかという理由で可憐さを諦めることはありません。この要素も、適切に扱えば非常に効果的な表紙を生み出すことができるのです。このL'odeの表紙のように、全体に咲き誇る花々も立派なデザインとなります。
刺繍というアナログなものを敢えてデジタルらしく表現することで、三次元的なテクスチャを生み出しながら、デジタルアートへのいざないというテーマも同時に表現しています。
多くの場合、雑誌の表紙に載るようなモデルは読者の方を向いているものですが、この場合はどこか違うところを向いています。それがまた絶妙に奇妙で、エキセントリックに感じられるのです。
2015年版のPrint's New Visual Artistsの表紙を見てみると、まるで右上から光が当たっているように見えますが、実際には色のグラデーションで表現されているものです。これにより、三次元的に見せることも可能となっています。
光沢のある黒い背景に、力強い女性をサイケデリックな色使いで表現しています。
このPilotの号では、その雑誌名をセンターに配置することで目立たせています。それと同時に、PILOTを囲む円とOの文字が同じ形になっていて、ダーツの的のように注意を引き付けてつけてくれるのです。
Wadのこの表紙では、モデルの顔をふたつに破り、そこから別の画像を覗かせるという技を使っています。三ツ目になっていることもあって、写真を見た人はなかなかこの画を忘れることができないでしょう。
この雑誌名、LiceUliceとは、『ストリートの顔』ととも訳せる言葉で、まだ見ぬストリートの人々の力強さを示す表紙としてこのようなデザインが成されています。シンプルな要素で作られていますが、大胆であり、それでいて力強いメッセージ性が感じられます。
ここまでバーコードをデザインの一部にしてしまった例はそうありません。この例では、バーコードの一部が延びて、9.11のテロを表現しています。
Sidney Limは、雑誌名を筆文字で書いたようなフォントを印刷した透明のページを用いました。これがその下の写真に掛かる雲のようにも見えるところがポイントです。
できるだけ色を抑えて、シンプルなイラストを使うというのも良いアイデアです。例えばMiriam Garciaはスイマーを表現するのに、本当に最小限の色と要素しか用いていません。
このSlantedの表紙では金が使われています。模様が入っていることで、光に当たったときにそれが目立つように光るようになっています。金色と光が、それ以外の要素との最高のコントラストを生み出しているのもポイントです。
グラフィックデザイナーであるDavid Carsonは、タイポグラフィやレイアウトに対するその実験的アプローチで有名です。このRay Gunの表紙では、ぼやけた画像の上に黒のタイポグラフィを大胆に据えることで印象的なデザインを生み出すと共に、それぞれの文字の穴の部分を埋めてしまうことで独特の雰囲気を醸しだしています。
このFricoteの表紙では、口紅を塗った口が凍ったラズベリーを咥えています。艶感のあるリップと光るアイスのキューブが、ハイエンドなセンスを印象づけているのです。
雑誌名であるRumorのoの文字を縦長に引き伸ばしています。ただ見た目として面白いだけでなく、画像との奥行き表現や、その他表紙にある情報との整列感を出す意味でも重要な役割を担っているのです。
シュールなものを見ると、人は「これは何だ?」と思ってしまうものです。例えばMagrocardonaのこの写真は、女性が半分に分かれてしまっていますが、向いている方向が全く逆になっており、いかにもシュールな画となっています。
時には伝統的な道具を使ったり、普段は使わないもので表現に挑戦したりすることも良いでしょう。例えばAdbustersは、絵の具やクレヨン、パステル、鉛筆で、こんな表紙を生み出しました。
例えばAnagramaのように、モデルを光沢のあるボーダーの内側にフレーミングするというような伝統的な手法に従うのも良い手です。今回の場合、基本に忠実ながら、フレームの色を赤にして、高級感のあるブラックとホワイトとの調和を図っています。
一方Spleenの表紙もフレーミングを活用していますが、そのフレームの幅がとても大きくなっています。雑誌のタイトルなどはフレーム上、四隅に散りばめられており、中央に添えられた画像が小さく、しかし非常に目立って見えるようになっているのです。
セピア色に加工すると、それだけでノスタルジックな雰囲気をプラスすることができます。モダンでコンテンポラリーな印象とはかなり異なった見え方になること請け合いです。
モデルの顔が引き伸ばされているように見えますが、実際にはシルクのスカーフに印刷されたその顔が垂れているという状況になっています。それは、この号がシルクに関する号だからです。
敢えてフレームの一部を隠しながらも、モデルの口のフレーミングは顕在です。ちょっと変わった画像に誰もが注目することでしょう。
若き才能を紹介するウェブマガジンであるMypが用いたのは、透明度の違う幾何学的図形を重ねて配置することで、写真に奥行きを持たせるという表現方法でした。
この表紙では、浅瀬に立つ男性がより深いところへと向かう様子を表現し、それによって冒険感を出しています。
胴上げされているその瞬間を収めた写真で、そのダイナミックさは静的イメージであるにも関わらずしっかりと伝わってきます。
雑誌名をネガティブスペースとして切り抜くことで表現しながら、その切り抜きの向こうにモデルの顔も覗かせています。モデルの前髪とこのブロックによりモデルの目がフレーミング効果を受けているところもポイントです。
その雑誌名をページの中心に据えていますが、同時にモデルの顔を隠すことで匿名性を強調し、見る人とモデルの繋がりを断絶するという手法を用いています。
一見すると金色のパターンが画像に貼り付いているように見えますが、実際にはセピア色の写真に白色のパターンが用いられているという構造になっています。幻想的でロマンチックなムードにぴったりです。
広めのボーダーによって余白がフレーミングされていますが、複雑なデザインと同じくらい、逆に印象的なデザインとなっています。
頭の上にボールを乗せている少年の写真を使っていますが、そのアングルが下からになっていることで、少年の存在感が増し、同時にデザイン全体の上部に消失点を生み出しています。
ビーチでキスするカップルに黄色いフィルターを掛けることで夏の暑さを表現し、同時に燃えるような赤で表現された雑誌名も強調することに成功しています。
ムーディーで雰囲気のあるこの表紙は、ネイティブアメリカンの飾りを身につけた男性のシルエットによるものです。
Brownbookでは写真やイラストなど様々な画像が用いられますが、その特徴は白いページに六角形という形で掲載する点です。この号でもその特徴は顕在ですが、頭と足先がその六角形の頂点に来るようになっているところは流石と言えるでしょう。
Collectも表紙のレイアウトに統一感を持たせており、その特徴は中央にあらゆる要素を固めてしまうという点です。背景は一色で、全体に広がるような色合いとなっています。
赤色が上部、真ん中、そして下部と配置されているところがポイントです。それぞれがバランスを取りながら互いの要素を結びつける役目を果たしていて、また同時にモデルの目にも注意が行くようになっています。
デザイナーであるViolaine & Jérémyは、ソフトで柔らかい色使いを好んで使います。今回はティーカップを表現すると同時に、そこから立ち上る湯気も見せているところがポイントです。
三つの顔が重なって配置されていますが、それが紙を破ることで現れているように見せています。
独特のアングルから取られた写真と、そこに生まれているパターンが印象的な効果を生み出しています。
このデザインを生み出すのに用いられたのは、鉛筆と口紅だけ。唇の絵に口紅で文字を書き、そのパターンを4度繰り返しているのです。
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