ブランディングとは?デザインを統一するだけでない企業の戦略

ブランディングとは?デザインを統一するだけでない企業の戦略

クリエイティブな専門職の方だけでなく、今や誰もが聞いたり口にしている言葉「ブランディング」。しかし、ブランディング=高品質なものにする、デザインを統一する、などと思われがちなのが現実のところ。今回は、ブランドマネージャー1級の資格を持ち、様々な企業やホテルのブランディングに携わってきたクリエイティブディレクターの大嶺さんに「ブランディング」について聞いてみました。

 

大切なのは、客観的に自分の会社を見れるかどうか

― そもそもブランディングとは?

ものすごく簡単にいうと、企業やブランドが「こう思って欲しい!」というイメージを、ターゲットに持ってもらうための戦略です。「高級なホテルと思って欲しい」とか「アットホームな企業と思って欲しい」というような、経営者が思ってほしいイメージを形にしていくことです。ブランディングするということは会社を見直すということなので、会社に所属している人たちがいかに、客観的に自分達の会社を見れるかがめちゃくちゃ大切なんです。

社内にいる人たちが当たり前だと思っていることも、実は外から見たらそうじゃなかったりする。だからこそ客観的な目線が必要で、「一生懸命作っているから素晴らしい」ではなく、もっと具体的に「この企業はこんなことをやっている」というのをターゲットに伝えていかないといけない。何を聞いたらその人たちが一番ビビッと来るかを、フォーカスして狙っていく必要があるんです。

ユナイテッドクリエイティブ

4年前から手がけているある企業では、社内インタビューを行ったときに、女性の専門職が多いことに気づいたんです。僕はそこが他社にない売り込みポイントだと思ったので、プロモーションツールに「女性が働く明るい職場」っていう絵を作っていきました。それは決して、「私たちの会社には専門職の女性がたくさんいます!」って大々的に表現するのではなく、それを体現できるような柔らかいイメージを演出していくということ。

また、ブランディングは一部分だけで変えればいいというわけではないので、「会社のイメージは良かったのにスタッフは最悪だよね」とならないよう、リクルートや社員教育の分野に携わることもあります。ブランディングを見直した企業で、その年の売り上げが50%もアップしたこともあります。もちろんブランディングだけの効果ではないんだけれど、少なからず影響はあると思っています。

ー ブランディングをしていくにあたっての流れは?

まずは、自社の強みと弱みを十分に知ることから。当たり前だけど、これを分かっていないことが結構ある。それぞれがなんとなく「うちってこんな感じだよね〜」っていうものを持っていても、共通認識としてきちんと文面に落としていかないと認識にズレが出てきてしまう。自社の「これが強みです」っていう部分と、「ここはめっちゃ弱いよ、どうする?」っていう部分を明確に言語化し、そこからどうあるべきかを考えていく必要がある。(※大嶺さんにお伺いしたブランディングの流れは以下の通り)

  1. 自社の強み、弱みを明確にする
  2. 競合他社の強み、弱みを知る
  3. 競合他社にない強みを探る
  4. 自社がどうなっていきたいかを明確にする
  5. 自社の強みやどういう会社にしていきたいかを、ペルソナや一般に向けて広告やホームページ等で発信・実行する
  6. 顧客がリピートする仕組みを作る

いろんな立場や職種の人が参加するからこそ見えてくる

ー どんな人をブランディングの会議に入れた方がいいですか?

ブランディングチームは、会社のことを思っているいろんな人に集まってもらいます。専門職だったり経理だったり、それぞれの部署でいろんな立場の人に参加してもらいます。だって、いろんな視点からの声を聞かないと分からないことがたくさんあるから。そうすることによって、ここは改善の余地があるな、とか会社の実情を初めて理解できたりする。そういうのをチェックして管理していくのが僕たちブランドマネージャーの役割。「うちの会社は他社とどこが違うのか?」「どこが売りなのか?」っていうのが分からないと、絶対競争からは抜け出せない。何か他と違う武器を持っているから指名されると思うんです。

僕が携わる企業では、月に1回くらいブランディングチームで会議を行なっているんだけど、その時によく言っているのは、必ず役員などの決裁権を持っている人を入れて欲しいということ。だって、現場だけで「いいね、いいね」って決まったことが、役員に上げたときに「なんでこうなるの?」と言われて進まないことがある。もちろん、役員たちは却下するのも仕事だから仕方ないんだけど、まとまるものも全然まとまらない。だったら最初から会議に入ってもらった方がいい。役員は1人いればいいので、あとは会社を変えていくことに興味を持っている人がいるのが理想だよね。

ー 社外の人にも意見を聞いた方がいいですか?

もちろん、社外の人たちに意見を聞くことも必要だけど、一番大切なのは自分たちがどう思っているかっていうこと。それがブランディングにおいて核になって来る。だから、まずは社内で「あの会社いいよね〜」「どこがいいんだろう」みたいな話をブレスト的に詰めていく。そして、次のステップで座談会やインタビューなど、社外の人たちからどう思われているかっていう情報を得るっていう感じかな。

ー 会社の規模によってやることは違うんですか?

あまり変わりはないんだけど、ステップがあまりにも複雑なので、少人数でやっている会社だったら出来る限り省いていかないとすごく時間がかかってしまう。基本的に、うちが仕事を受ける場合は年間で対応しているんだけど、ブランディングって1年やったら「はいOK!終わりです!」っていうものではないので、僕がいなくなってもブランドが保てるようなルールを渡して、そのまま運用できるようにはしています。

ブランディングとは?

企業のブランディングから発展し、最近では建物の内装に携わる案件も増えているそう

大きい組織ほど共通認識を持てるルールブックが必要

ー 社員へブランディングについて周知する方法は?

3人くらいの小さな会社だと簡単だけど、社員が多い会社の場合、全員にきちんと周知させるにはそう簡単にはいかない。そこで、なんとなく皆んな分かっているけれど、こんな会社であるっていうっていうものをはっきりと明記したツールがあったりする。ホテル業界では有名なクレドって呼ばれるものなんだけど、そこには企業活動や仕事の基準になる信条・価値観で、経営理念よりも具体的な行動指針を明記している。新入社員が入った時なんかも共有して、理解してもらったりする。

デザインを整えていくことはパーツにしか過ぎない

ー では、間違ったブランディングはありますか?

デザイナーやクリエイターでも、「うち、○○をブランディングしてますよ」って話をよく聞くんだけど、統一感を持たせることを単純に、ブランディングしてるって言っちゃう人もいる。ロゴやイメージを統一することは、ほんのパーツにしかすぎなくて、全体の戦略そのものがブランディングだから。もちろんデザインが重要であることに変わりはないけれど、あくまで自分たちがこう思ってほしいというものを、感じてもらうためのツール。極端な話、オシャレなものを好まないお客さんをターゲットするなら、かっこいいイメージやデザインじゃなくても、ターゲットに響いてたらブランディングが出来てると言える。

企業に入っていくとき、僕が一番最初にするのが「ブランドって何だと思いますか?」という質問。だいたい洋服や車のブランドが上がってきたりするんだけど、きちんと説明すると「え?高級なものがブランドじゃないの?」って感じている人は少なくない。

ブランディングとは?

ー ブランディング成功の指標は?

具体的にここまで来たら成功!というのがないのがブランディング。でも、何らかの指標を設定することは大切です。僕はクライアントとの話の中で、何を指標にするか決めていきます。例えば、「売上」「認知度」「離職率」「社員募集の応募数」など。この中でも認知度は、自分達だけでは分からないので、調査をしないといけなくなってくる。

ただ、やっぱり数字でも見えない部分もあって。その時代それぞれで人々の環境や生活もいろいろ変わってくるから、常に企業やブランドは考えていかないといけないものだと思う。

企業のこう思って欲しいと、お客様のイメージをイコールにする

ー 具体的にどうやって世の中にアピールしていくんですか?

この世の中に接触する機会(=顧客接点)を増やすこと。身近なところだと看板やTVCMなんかがそう。「この会社、見たことがある」って思ってもらえるかが、ブランディングの基礎になっている。他えばターゲットの人たちが、夕方5時くらいに車で帰宅しながらラジオを聞いている人が多いだろうと仮説を立てる。その場合、この時間に集中してラジオCMを打ち出そうということになる。そうすると、「あ、またこのCMだ!」「この会社名聞いたことがある」という接点をいかに増やしていくかが大切。今の時代、顧客接点の代表格がSNSだよね。

ブランドの概念として、「人が知っているか」という最低のラインがある。いかに認知させるかっていうことが、そもそものブランドの大前提の定義。つまりは、いっぱい見てもらえるための顧客接点をどう増やしていくか。そして、その先に「こう思って欲しい」という企業の思いと、お客さんが感じる「こんな会社だよね」っていうものとをイコールにしていく。それがブランディング。マイナスなイメージで知られたら最悪だけど、知られないと始まらない。いかにプラスで認知してもらうかが大切なんです。

ユナイテッドクリエイティブ大嶺秀史さん

大嶺秀史(Omine Hidefumi)

沖縄県生まれのクリエイティブディレクター。東京デザイナー学院を卒業後に渡米。インディアナ州立ビンセンス大学商業芸術学部で、広告デザインの基礎・発想の仕方を学ぶ。東京へ戻り、デザイン会社、プロダクション、広告会社で働き、大手企業の広告・販促等にデザイナーとして携わる。沖縄に戻って広告代理店のディレクターとして勤務したのち、2006年にクリエイティブプロダクション「ユナイテッドクリエイティブ」を設立。2014年、ブランドを管理するブランドマネージャー1級を取得。県内を中心にデザイン、ブランディング、プロデュースなど、幅広い内容の案件をこなしている。また、2019年5月にオープンした高級ヴィラ「U-MUI」においては、ネーミング、ロゴ、サイト、戦略等、年間を通して立ち上げのブランディングにも携わった。

 

ユナイテッドクリエイティブ

http://www.unitedc.jp/

 

撮影/macoty

 

デザイン作成の切り札