グラフィックデザイナーに言ってはいけない20のこと

20-things-never-say-graphic-designer-probably-tb-2016x1134

デザインは大変な仕事。それを分かっているからこそ、デザイナーに委託するわけです。

たまたま私は、仕事において直面する困難について、色々な業種の人と話す機会がありました。そこで知った多くの人々がどういったことについて困っていることについて記事にしていくことにしたのですが、今回がその第一回ということになります。そして第一回に相応しいボリュームの多い内容にするべく、そのテーマは『デザイナーとクライアントのやり取りについて』としました。

仕事を依頼する側からすると、グラフィックデザイナーは扱いにくいタイプの人が多い印象だ、というのもまたひとつの見方であることは間違いありません。

デザインに関して独特の専門用語を持っていますし、特別なソフトウェアで仕事をしています。仕事を依頼する側からすると、その専門用語がどういったものなのか分からない場合も、ソフトウェアの仕組みが分からない場合もあるでしょう。そこでデザイナーと仕事をする場合、プロジェクトを先に進めて最終的に誰もが満足できるような成果物を実現できるよう、適切な質問をしていくようにすることが大切になります。デザインのプロセスを正しく理解しないまま、不適切な依頼の仕方のためにプロジェクトを空中分解させたくはないはずです。

では、不適切な依頼の仕方とは何でしょうか。以下、そういった『デザイナーが避けたいと思う依頼』、20例です。

01.「まだコピーの執筆が完了していないのですが、とりあえずデザインの草案だけ作っちゃってもらえます?」

マーケティングのエキスパートは、『コンテンツは王様だ』と言います。デザインはコンテンツに関連して作り上げられるべきであり、その逆ではないのです。コンテンツを最も良く見せるためにデザインを行えば、それだけ見た目も良くなり、ただコンテンツを既存のデザインに押し込むよりも良い結果に繋がるのです。また、コピーが完成した後でそれに合わせてデザインを再調整する必要が出てくると、それだけデザイナーの時間を潰してしまいますし、依頼する側としてもターンアラウンドタイムが増加してしまいます。そこで、コピーはできるだけ最終稿に近いものを用意し、それからデザイナーに仕事を始めてもらうようにすることで、全員にとってより良いものが生まれやすくなるでしょう。

02.「ちゃちゃっとやってもらえれば良いんで」

「ちゃちゃっと」とは言いますが、デザインにどれだけの仕事やステップが含まれているかということは依頼する側からは分かりません。また、多くのデザイナーは、良いものを作るためならちょっとした調整をするために少しくらい仕事量が増えることは厭わないものです。だからこそデザイナーは、『どれくらい時間がかかるでしょうか』と訊ねられる方が、『ちゃちゃっとやってくれれば』と言われるよりも有り難いと感じるのです。どれくらい時間が掛かるか訊ねられれば、デザイナーは経験則から正確にその時間を導き出し、必要な作業時間を答えてくれるでしょう。

03.「あとで編集できるフォーマットでもらえます?」

編集可能なファイルでもらったとしても、それを編集するには特別なソフトウェアが必要になるでしょう。また、せっかく綿密に作り上げられたデザインを、デザインの知識が無いばかりに台無しにしてしまいかねません。プロフェッショナルとしての品質が欲しい、しかし定期的に編集する必要があるという場合には、Canvaのような自分でデザインするタイプのツールを使うのが良い場合もあるでしょう。デザイナーにより作成されたテンプレートにアクセスして、カスタマイズしたり微調整を加えたりすることで、デザインのクオリティを損なうことなく対応することが可能です。

04.「違うバージョンもいくつかください。自分で見て良いと思うものを選ぶので」

高価なオーダーメイドのスーツやドレスを買うときのことを想像してみてください。その仕立屋に対して、「これを6つくらい別バージョンで作ってもらえます? その中から実際に見てひとつだけ選んで買いたいんですけど」とは言わないでしょう。グラフィックデザインは往々にしてデジタルによるものですが、だからといってその仕事にかかる時間が短いわけでも、それだけ簡単になっているわけでもありません。まず詳細な作成方針を決めておいて、そのデザインにあなたが何を求めているのかということをデザイナーが理解したところから始めることで、デザインのプロセスは両者にとってよりスムーズに進むことになるのです。そういった場合には、どういったオーディエンスを対象としているか、どういったトーンや見た目が好ましいか、予算はどれくらいかといった情報も必要になるでしょう。

05.「フォトショで加工できます?」

Photoshop(フォトショップ)など、素晴らしいソフトウェアが世の中には溢れていて、そうしたものを使えば素晴らしい効果を与えることができることは間違いありません。しかし、それらが万能というわけではないのです。時に、技術的に不可能なことを依頼されてしまうのがデザイナーという仕事でもあります。また、依頼する側からは、『できること』と『するべきこと』を分けて考えることも大切です。素晴らしく豪華なエフェクトをつけることや、加えられる手を加えることが必ずしもデザイン的に最善手であるとは限りません。また、Photoshopを使うことで手足が歪んで見えてしまったり、明らかに不自然なプロポーションになってしまったりしているモデルの写真は誰もが見覚えのあるところでしょう。Photoshopが常に良い結果に繋がるとは限らないのです。だからこそデザイナーに対しては、建設的なフィードバックを求めるようにすることが大切です。デザインについてどうするべきか、どこに手を加えるべきかといったことについて、きっとより良いアドバイスをしてくれることでしょう。

06.「一箇所だけ変更をお願いできますか? これで本当に最後なので」

あなたも、そしてデザイナーも、それが『最後』でないことを分かっています。そして恐らく、これが『最初』でもないのでしょう。まずはそれを認め、申し訳ないという謝罪の気持ちも込めて、次のように言いましょう。

「お時間を取らせてしまい大変申し訳ないのですが、また変更したい場所を見つけてしまいまして……。この部分[言葉/フォント/グラフィック/色]を変更できないでしょうか? この編集のために掛かる時間について追加料金が発生することは問題ありません」

グラフィックデザイナーは、あなたがそうであるのと同様に忙しい人たちです。あなたの要望に可能な限り応えてデザインをしたいとは思っていますが、自分の時間を大切にされたいという思いも当然持っているのです。そこで次回は、変更点がある場合、それをリストにしてデザイナーに渡すことで、一度にその変更を終えられるように配慮すると良いでしょう。

07.「(他のデザイナーの作品を見せて)これと同じ感じのやつお願いできませんか?」

著作権(や法的な問題)を抜きにしても、道徳的問題が残ります。他のデザイナーの作品をそのままコピーすることを良しとするデザイナーは居ないでしょうし、それを期待してはいけません。それよりも、あるデザインについて何処が好きかということを明らかにし、発注先のデザイナーにその要素に独特の色を加えてもらったり、その作品を参考にして、色使いやレイアウト、全体の構成などの要素を考えてもらったりする方が良いでしょう。

08.「ネットで見つけたこの画像を使えますか?」

ネットで見つけた画像をそのまま使おうとすると、後々に大変なことになりかねません。考えられる悪影響のひとつとしては、ひとつ前の項目で触れたのと同様に、著作権に関する法的問題への抵触が考えられます。その画像は、個人的利用や商業利用が許可されていない可能性があるのです。また、解像度が低すぎる場合、デザインに転用しようとすると綺麗に見えないということも考えられます。画像を購入する以外の方法を考えているなら、無料の配布サイトを探すようにしましょう。

09.「明日までにお願いします」

グラフィックデザインは、数クリックで終わるような簡単なプロセスではありません。あらゆるプロジェクトにはそのプロジェクトのためのプロセスがあり、それ相応の時間がかかるものなのです。中には一日で魔法のように完成するデザインもあるかもしれませんが、もっと多くの時間がかかるようなデザインも多数存在していて、それはそのプロジェクト(と、そのデザイナーの制作プロセス)によって大きく違うポイントなのです。デザイナーに仕事を依頼したいと思うときには、あなた自身の時間制限について連絡し、現実的にどれくらいの時間がかかりそうかということをあらかじめ見積もってもらうと良いでしょう。

10.「もう他の人が半分終わっている仕事があるのですが、その分、見積もりを安くしてもらえませんか?」

デザイナーが仕事の金額を決めるとき、様々な要素が考慮されています。何処で仕事をしているか、生活費はどれくらいか、スタイルはどうか、スキル、経験、その他数え切れないほどの要素が関係しているのです。あらゆるデザイナーには、それぞれの強みと提供できる能力の組み合わせに違いがあり、あるデザイナーの仕事料が『妥当』かどうかというのは一概に言えない問題なのです。ただし概して言えば、支払った金額に相応しいだけのものが得られると期待して良いでしょう。だからこそ、デザイナーについてどういった特徴が最も重要視されるべきか(スピード、クオリティ、オリジナリティ、評判、パーソナリティなど)を考えることが重要になります。

金額について交渉することはいけないことだということではありません。しかし、最初にデザイナーと応対するとき、相手への支払い額を安く見積もりながら通常通りのクオリティを期待すれば、交渉は決裂し、同時にデザイナーへの敬意が足りないということにもなるでしょう。

ちなみに、デザインスタジオであるHensher Creativeは、このテーマについて詳細なガイドを公表しています。

11.「(プロジェクトの途中で)ところで、これのデザインもついでにお願いしたいのですが」

ある程度の合意を得た後にプロジェクトの途中でデザインを追加する(例えばロゴのデザインをしている途中で名刺などのデザインを追加で依頼する)というのは、デザイナー目線からすると最悪の展開のうちのひとつです。こうした追加デザインについての追加費用が出ない場合には、より最悪だと言えるでしょう。

ここでもまた、作成の方向性やまとめが役に立ちます。プロジェクトの全体像を制作の方向性としてまとめておくことで、プロジェクト内において足踏みを揃えながら、予算やスケジュールをそれに合わせて計画していくことが可能になり、不必要なフラストレーションが発生することを避けることができます。

追加の作業が発生してしまう場合や予期していなかった工程が必要になった場合、新たに予算を算出してスケジュールを組み直さなければいけません。

12.「ポップな感じにしてもらえます?」

デザイナーは依頼人の心を読めるわけではありません。したがって、デザインについてのディレクションやフィードバックは、可能な限り具体的でなければいけないのです。「ポップにしてほしい」や「尖った感じに」、「モダンに」や「ファンシーな感じで」といったような言い方では具体的にどのような修正が必要なのか分かりにくいので、求めているものに近いサンプルなどを提示するとより分かりやすくなるでしょう。

[EN image here]

13.「ロゴはウェブサイトにあるものをそのまま使ってください」

会社のウェブサイトやFacebookページなどからロゴを流用して新しいデザインに使うことは、特に印刷物を作りたいというときにクオリティを損なうことになります。ロゴは、くっきりと見えるように特定の解像度で作成されなければいけないのですが、その解像度は印刷物とウェブ上では異なるからです。ロゴを提供する際におよそ間違いない方法は、ベクターファイルで提供することです。ベクターファイルを用いることで、クオリティを損なうこと無くリサイズが可能になるでしょう。

一般的なベクターファイルのタイプとしては、AI(Adobe Illustratorのソースファイル)やEPSがあります。もしこうしたファイルを持っていないのなら、ロゴの元々のデザイナーに頼めば、適切なファイルを提供してくれるでしょう。

14.「最初の案が良かったですかねえ」

デザイナーとは、何が美しいかを見抜き、技術的にそれを再現する能力を持っている人たちです。コンセプトにこだわり過ぎて何度も修正を依頼するのではなく、一度何が必要なのかを伝えたら、デザイナーが作り上げるものを信用し、その直感的能力を信頼しましょう。そうしてできたものを解釈するには数日が掛かる場合もあるでしょうし、同じくデザインの知識を有する第三者にチェックしてもらうことが必要になる場合もあります。その上で、依頼したい変更内容が必要かつ妥当であるようにしなければなりません。あれこれと実験をするように変更を加えた結果、結局最初の案が一番良かったというような形でデザイナーの時間を浪費させてはいけません。

15.「こっちで(ワードやペイントなどのツールで)デザインを作り始めた途中のものがあるんですが、そのデザインを完成させてもらえますか?」

通常、PCに搭載されている基本ツールは日常的な用途においては最適なツールですが、プロフェッショナルなデザインを行うことを想定して作られているわけではありません。あなたはもちろん、経験のあるデザイナーであっても、よくあるホームオフィスのツールでは、求められているようなクオリティの仕事はできないのです。だからこそ特別なソフトウェアが存在しているのであり、そうしたソフトウェアを最初から最後まで使ってデザインをしてもらう方が、最終的な成果物もクオリティの高いものになるでしょう。

16.「お礼はお支払いできませんが、色んなところで使うデザインなので宣伝になると思います」

デザイナーという職業において『宣伝になる』というのは大切なことですが、それだけでは毎日を生きていくことはできません。特にフリーランスのデザイナーの場合、従来の雇用状態における福利厚生などを一切享受できていないため、税金や保険については自身で支払い、必要な機材も自分で購入し、自宅事務所の維持も自分で行わなければいけません。こうしたコストに加えてもちろん、通常の生活費も考慮し、受ける仕事の金額を決めなければいけないのです。したがって、金銭的に謝礼が発生しないような仕事を受けるというのは、通常は選択肢にありません。

17.「デザインが完成したら、その後でこちらが納得できるまで調整をお願いしたいのですが」

多くのデザイナーは、初期費用の範囲内での修正回数について取り決めを設けています。これは、デザインが完成したとしても修正は常に発生するものであるため、理論上、そのようなプロジェクトには終わりが無くなってしまうからです。デザインについて数回程度修正を依頼することはできるでしょう。そうした依頼はよくあることですし、『完璧』に近づけるため、多くのデザイナーはそうした修正を喜んで受けてくれるはずです。しかし、それにも限度があります。忘れてはいけないのは、どんな些細な変更でもそれには時間がかかるということ、変更を依頼すれば、それだけプロジェクトの完成も伸びてしまうということです。

18.「(特殊で複雑なプロジェクトについて)どれくらいお金が掛かるのでしょうか?」

この質問は、あなたが思っているほどシンプルなものではありません。プロジェクトによってその見積もりは変わりますし、もちろんデザイナーによっても変わります。デザイナーであるDavid Airey曰く、「(デザインのプロジェクトについて)どれくらいお金が掛かりますか?」と訊ねるのは、不動産業者に対して「家を買うのにどれくらい掛かりますか?」と訊ねるようなものだ、ということです。

これと同じで、あるプロジェクトに関する見積もりを行うのは、簡単なことではないのです。多くのデザイナーは、見積書を提出する前にそのプロジェクトについて深く掘り下げて状況を精査したいと考えています。その複雑さや納期の短さ、どういったタイプのフォーマットや成果物が必要なのか、印刷物になるのか発行物になるのかといった様々な要素により価格が決まるのです。

デザイナーに仕事を依頼するときには、いくら掛かるかといったことを訊ねるよりも前にプロジェクトの詳細を提供することで、より正確で妥当と思えるような見積もりを得ることができるでしょう。

19.「メールや電話はいつでもOKですか?」

フリーランスや夜型のデザイナーであっても、誰でも24時間いつでもメール返信できるということはありません。誰にでもスケジュールというものがありますし、複数のクライアントを同時に抱えているのが当たり前だからです。そのため、すぐに返信をもらうというのは難しい場合もあるでしょう。

連絡を頻繁に取れるかどう気がかりなら、対応している時間について予め訊ねておき、その時間帯に重要なメッセージを送るようにしましょう。また、デザイナーにとって都合の良いコミュニケーションツールが何なのかも把握しておくと良いでしょう。

20.「プロなんでしょ、後は任せましたから」

確かにデザイナーは、クライアントの指示や情報から素晴らしく機能的なデザインを生み出すプロであり専門家ではあります。しかし、デザインを始めるよりも前に必要な情報を得ておくことで、デザインのプロセスがよりスムーズなものになることは既にお話ししたとおり。そのために制作の方向性や目的などの詳細な覚書があれば理想的ですが、「こんなデザインが好きで、こんなデザインは好ましくない」といったような単純な情報であっても充分に役立ちます。Propoint GraphicsのJeff Shollは、次のように言っています。

「『後は全部プロに任せますので』といったように言うのは、『私たち(クライアント)は、私たちの考えを理解してもらうことをお手伝いするつもりはありません。でも、とにかく良いものをお願いします。何が良いものなのかは私たちも分かっていませんが』と言うようなもので、これはグラフィックデザイナーにとってもなかなかのプレッシャーです。ここでより大きな問題になるのは、そうすることでデザイナーの自由度が大きくなりすぎることです。クライアントの物語を語る上で、あらゆることを試すことになります。そうして生まれたのがピカソの作品のようなものであったとして、しかしクライアントの要望がレンブラントのような作品だったなら、問題になってしまうでしょう」

デザイナーは、面白く効果的なデザインを作り出すことに全身全霊をかけることができます。しかし、あなたが欲しいものは、あなた自身にしか分からないのです。したがって、それをどう伝えるかということが非常に重要になります。

まとめ

一緒に働きやすいクライアントになることで、デザイナーから得られる成果物もよりベストなものに近いものになります。そのようなクライアントとは、分かりやすく丁寧にやり取りをしてくれる、予め何を求めているのかが分かりやすい、協力する姿勢のあるクライアントのことです。

一方デザイナー側としても、そのような姿勢を持っていることで、より顧客満足度を高めることができるでしょう。多くのデザイナーは海外のデザインプロセスを踏襲したり、質問に答えたりすることを苦としません。また、『どうしたら良いでしょう』とアドバイスを求められることをとても光栄に思うものです。

協力して作業をするという環境ならどこでもそうであるように、ほんの少し、互いにリスペクトを払い、ギブアンドテイクを意識するだけで、より色々なものが生まれる長期的な関係が生まれていくのです。

関連記事

すべて表示

アイディアを形に

もっとも簡単なデザイン作成サービス