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日本で初めて教育機関にCanvaを本格導入し、750以上のアカウントを実装中の長野県池田町の事例

生徒たちが自由にCanvaでデザインを楽しみ、ついにCanva部も発足しました
Canvaでデザインをはじめる

白馬村を拠点にGIGAスクール構想を推進する「学びを止めない」教育ICTコンサルタント、清水智さん

2019年12月に文部科学省の旗振りにより発表されたGIGAスクール構想。4,000億円という戦後最大の予算が割り当てられた巨大プロジェクトですが、生徒一人に1台ずつPCやタブレットPCが配布されるということが報道されても、具体的に教室の中でどのように運用されているのか、外部からうかがい知ることはできません。

清水智さんは、長野県を拠点にGIGAスクール構想を現場レベルで推進する教育ICTコンサルタントです。ICTコンサルタントであると同時に教職でもあることから、実際に教室の現場でITを駆使し、さまざまなモデル授業を行っています。そんな清水さんが積極的に授業に取り入れているのがCanvaです。Webベースでデザインできるため、ChromebookやWindows、MacなどのOSを問わず、あらゆる端末からアクセスし、コラボレーションできるのがCanvaの魅力だと語ります。

昨年、教育機関に向けたサービスとしてCanva for Educationが日本で本格的に始動しました。その際、いち早く教育現場への導入を実現したのが清水さんです。長野県の北アルプスの麓にある池田町の教育委員会と提携し、日本で初めてCanva for Educationで約750アカウントを本格導入することになりました。

その清水さんから、教育の現場でCanvaをどのように活用しているのか、教育機関としてはじめてCanvaの導入を行った際の苦労と手応えについて、生徒たちはどのようにCanvaを使いこなしているのかなどについてうかがいました。

教職からICTコンサルタントに

白馬村に移住する前は、都内から南へ1000kmに位置する、世界自然遺産小笠原の小学校で教えていた清水さん。現在は、一般社団法人エンターキーにICTコンサルタントとして勤務しつつ、長野県の大町南小学校で講師として教えています。その他、教育機関のICTやDX(デジタルトランスフォーメーション)化、授業のユニバーサルデザインに関する相談への対応など、幅広い活動を展開しています。

「白馬村に移住して最初の都市は小谷村の小学校で常勤講師として勤務していました。2年目に池田町の登校支援教室の講師になり、3年目から一般社団法人エンターキーの教育ICTコンサルタントとして活動しています。

エンターキーとの関わりは、池田町の教育委員会がICTを推進するために業務委託したことがきっかけです。コロナ禍が始まると同時にGIGAスクール構想がスタートしたのですが、教育機関だけでは技術的に導入が難しいということで相談がありました。

エンターキーは、ネットワークの専門家である濱田代表と教職の経験が長い私とでタッグを組んでいるので、実際に現場に入ってプロジェクトを構築できるんですよ」

キャリアのスタートは東京都。なぜ白馬村に?

もともと東京都の日野市で教職のキャリアをスタートした清水さんですが、小笠原の小学校に赴任し、その後白馬村へと移住します。小笠原から東京に戻るという選択肢もあったはずですが、白馬村で暮らすことを決めたキーワードは「ウェルビーイング」でした。

「もともと長野県に行きたかったんです。教職のキャリアアップとしては、主任教諭、主幹教諭、指導教諭、副校長、校長といった段階がありますが、小笠原から戻ったときに東京都区部で主幹教諭をやるか、教育行政指導主事に入るか、教職大学院で学ぶかという選択肢があったのですが、それでは自分のウェルビーイングが実現できるだろうかと疑問でした。

小笠原は移住者がとても多く、皆さん、仕事だけではなく、プライベートも充実したウェルビーイングを実現しています。それがとても楽しそうでした。5年間の小笠原での生活はやりがいしかありませんでした。総合的な学習の時間などでは、世界自然遺産という小笠原のポテンシャルを学校教育と関連付け、さらには行政や環境省、地域団体、民間事業者のみなさんと一緒に授業を作ることができ、やりたいことにどんどんチャレンジさせてもらえました。

小笠原から次に暮らす場所について考えたとき、どうせ引っ越しするなら、山遊びができる白馬村に移住しようと考えました。私はプロフィールの一つに『滑り手』と記載しているように、夏はMTBやトレッキング、湖でのパドルスポーツ、冬はスノースポーツを家族や友人と楽しんでいます。この山遊びから人間関係が広がり、仕事につながったりしています

Canvaを知ったきっかけはnoteのヘッダー画像

Canva for Educationを池田町の小中学校に導入するほか、プレゼンテーション資料や授業準備などの、個人としてもさかんにCanvaを活用している清水さん。そのきっかけは何だったのでしょう。

「(クリエイター向けのプラットフォームである)noteを使っていて、Canvaでヘッダー画像が作成できることを知りました。使ってみるととても便利で、いいサービスだと思っていた矢先に、日本でもCanva for Educationが開始されると知り、さっそく手を上げました。当時の池田町の竹内教育長にCanvaの魅力を説明し、小中学校向けに約750アカウントを実装する許可をもらいました。この動きが迅速だったので、日本では池田町が1番早くCanva for Educationを実装できたというわけです。

もちろん学校単位でCanvaの導入は進んでいると思いますが、このような外部サービスを教育委員会の案件として扱う場合、結局のところは教育長がサインするかどうかなんですよ」

確かに、日本の学校ではセキュリティの面から、慎重な対応になる場合が多いように思えます。

「そのとおりです。外部サービスへのログインすら許可されない自治体もあります。池田町にCanvaを導入できたのは、ひとえに当時の教育長のおかげですね。もともと『信州やまほいく(信州型自然保育)』認定制度で知られた人だったのですが、その人が池田町の教育長になった後のタイミングで、私も池田町に勤務することが決まり、GIGAスクール構想も含め、池田町の教育をボトムアップで改革しようということになりました」

クラウドを駆使したパイロット授業を提案

明日は、池田町立会染小学校のパソコン室から、少し離れた場所にある別の小学校の6年生にフルリモートで家庭科の授業を行うという清水さん。コロナ禍のために、外部の人が教室に入ることができなくなったことが理由ですが、池田町では、授業を完全にオンライン化する仕組みができあがっているようです。

「通常、(ITの側面から授業をサポートする)ICT支援員・サポーターは教員免許状を持っている場合が多くはないんです。そのため、積極的に授業の内容を提案したり、生徒に指示を出したりできません。

でも僕は小学校の免許があるし、教えた経験も豊富だから、さまざまな状況やリクエストに応えてパイロット的な授業づくりを提案できます。そして、リアルで授業を行いつつ、オンラインにも一元化しています。

たとえば、自分が担当しているクラスごとに、連絡事項や課題などをGoogleクラスルームに集約して管理しています。この際のアジェンダ・学習予定はCanvaで作成することが多いですね。リモート授業の場合は、生徒たちにChromebook(クロームブック)でそこにアクセスしてもらいます。僕の役割は、このような授業モデルを提示して、先生方に見てもらうことです。いわば、授業そのものが提案なんです

Canvaの大きなメリットは、子供たちが「失敗できる」こと

リモート授業でCanvaを活用しているという清水さん。子供たちはどのように使いこなしているのでしょうか。

「小学校1年生が毎日Canvaを使いこなしています。たとえば国語科の『動物の赤ちゃん』という課題は、通常なら紙のワークシートに書き込むのですが、素材が豊富なCanvaを使えば、子供たちが自由に選ぶことができます。説明文は図鑑を見ながら書き込み、デジタルとアナログのハイブリッド方式で作品を作っていきます」

小学校1年生が文字入力までできるとは驚きです。キーボードも操作できるのでしょうか。

「このクラスでは、ひらがな、漢字、カタカナ、ローマ字入力のいずれもできます。言語の習得はインプットするタイミング次第なので、学んでいる彼らからすれば、すべて同じように身につけるものなんです。僕は、『読み書き計算タイピング』って言っていますが、重要な基礎スキルです」

小学校低学年でもCanvaを使いこなしているとは言え、当初は試行錯誤もありました。ピクトグラムを使ったアイコンや、漢字にふりがながあればと感じることもあったそうです。

「Canvaのインターフェースは、まだ改善の余地があるとは思います。でも、それを含め、隣り合った生徒同士で使い方を相談しているうちに、裏技的に操作方法を発見したり、いち早く理解した子が教えたりという形で、協働的な学びが実現できました。それは自分の目指す教育でもありました。すべてをこちらが説明するというのではない学びの形です。

さらにCanvaを使うことの大きなメリットは、失敗しても大した失敗にはならないということです。Canvaを使う以前の教育モラルでは、やってはいけないことばかりでした。でも、Canvaの中だとなにをやってもいい。有料課金が発生するということもなく、音楽も写真も自由に使えます。授業がクリエイティブにすすみ、生徒たちがコラボレーションして編集できる。1億点もの素材が使えるというのはすごいことです」

コロナ禍の中、Canva部がオンラインでスタート

なんと、池田町の中学校では有志による期間限定のCanva部も発足したといいます。しかも、メンバーは自宅からオンラインで参加するという、今の時代を反映した活動ぶりです。

「中学校の生徒会でCanvaを使っていたところ、動画を編集したいと言われたのが発端です。新型コロナウイルス蔓延防止のため部活動が停止中だったので、オンラインの部活を結成しようということで始まりました。活動内容は、動画の制作や編集です。

みんな自宅から自分のPCで参加するのですが、ネットワーク環境も生徒の端末操作スキルも問題ありません。新型コロナウイルス第6波の感染拡大までに、みんなで顔を見ながらオンラインで勉強したりクラブ活動ができるようにしたいとイメージしていたのですが、そのとおり実現しています。子供のほうが、Canvaをクリエイティブに使いこなす速度が早いですね

ICTの課題とこれからのGIGAスクール構想への取り組み

現在、Google for Educationの認定トレーナー資格を取得すべく、努力を続けているという清水さん。それ以外にも長野県の教育イベント「Learn by Creation Nagano」のディレクターなど、意欲的な活動を続けています。今後の清水さんの活動のイメージについてうかがいました。

「今後数年間は、GIGAスクール構想を現場で実際に運用しつつ、学びを止めないという形を続けたいと思っています。

教育ICTについては、学校間や学級間、自治体間でGIGAスクールへの取り組みの違いが大きいというのが課題です。たとえばネットワーク環境について言えば、生徒5人あたりで1つのポケットWiFiを使っているため、通信速度が1Mbps以下という学校もあります。端末も、古いタブレットPCだったりなど。ところがその隣の自治体では、高速回線でChromebookを使いこなしていたりする。

公教育における公平さという意味ではどうだろうと思いますね。それに伴い、教員のスキルにも個人差があります。あまりにも感覚が違うと、教育ICTとしてのアドバイスをしてもあまり大きなインパクトを生むことができません。しかし、僕はやりつづけるしかないと思っています。僕の提案に対して積極的に反応してくれる先生方もいるので、少しずつ広げていきたいですね」

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