最終更新日 : 2026年6月16日
請求書は、商品やサービスを提供した対価として支払う金額や条件を取引先に正式に伝える書類です。取引内容や金額、支払期限を明確にすることで、会計処理や税務処理の根拠となり、発行側・受領側の双方にとって取引の証拠書類としての役割を果たします。
請求書自体には、法律上の発行義務や統一されたフォーマットはありません。ただし、実務上は請求書の発行が前提となるケースがほとんどであり、基本的に記載すべき項目が定められています。さらに、インボイス制度においては、適格請求書発行事業者に対して特定の記載事項が義務付けられている点にも注意が必要です。
本記事では、請求書の作成に慣れていない方に向けて、基本的な請求書の書き方や適格請求書(インボイス)の書き方をはじめ、すぐに使える無料テンプレート、発行時のポイントや注意点、送付方法までを網羅的に解説します。
また、請求書は内容が正確であることが最優先ですが、同時に「見やすさ」や「分かりやすさ」も重要です。そこで、豊富なテンプレートを利用しながら簡単に請求書を作成できるデザインツール「Canva(キャンバ)」(新しいタブまたはウィンドウで開く)の活用方法についても紹介します。
※本記事で使用している画像は、全てCanva(キャンバ)で作成しています。
請求書とは、商品やサービスを提供した事実と、その対価として支払ってもらう金額を取引先に正式に伝えるための書類です。単に金額を伝えるためのものではなく、「どのような取引が」「いつ行われ」「いくら支払う必要があるのか」を明確に示す役割を持っています。
また、請求書は会計処理や税務処理においても重要な書類です。売上を計上する際の根拠となるほか、消費税の計算や帳簿管理の際にも参照されます。そのため、請求書は発行する側だけでなく、受け取る側にとっても取引内容を確認するための重要な証拠書類といえます。
特に個人事業主やフリーランスの場合、請求書の記載内容が曖昧だと、取引先から修正を求められたり、支払いが遅れたりする原因にもなります。スムーズに取引を進めるためにも、請求書の書き方を正しく理解しておくことが大切です。
請求書の発行について、意外と知られていないポイントがあります。
・請求書の発行自体には原則として法律上の義務はない
ただし実務の観点では、請求書は取引内容や金額を証明する重要な書類であり、実質的には発行・受領が前提となるケースがほとんど。請求書がなければ、取引先が支払い処理を進められなかったり、後から「言った・言わない」といったトラブルに発展したりする可能性がある
・請求書には法律で定められた統一フォーマットは存在しない
ExcelやWordで作成したもの、手書きのものでも、必要な情報が記載されていれば問題ない。そのため、会社や個人ごとにフォーマットが異なるのが一般的
一方で、インボイス制度の開始により、適格請求書発行事業者には一定の記載事項が義務付けられています。インボイスに対応する場合は、通常の請求書とは異なり、定められた項目を漏れなく記載する必要がある点に注意が必要です。
請求書と混同されやすい書類として、見積書・納品書・領収書があります。いずれも取引に関わる重要な書類ですが、使われるタイミングと目的が異なります。
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 見積書 | 取引を行う前に「この内容で、この金額になります」と条件を提示するための書類。あくまで事前確認のためのものであり、支払いを確定させるものではない |
| 納品書 | 商品やサービスを実際に納品した事実を示す書類。主な目的は、数量や内容に間違いがないかを確認することであり、金額の請求そのものを目的とした書類ではない |
| 領収書 | 支払いが完了した事実を証明する書類。「確かに代金を受け取りました」という証拠として、支払い後に発行される |
これらに対して、請求書は支払いを求めるための書類です。取引内容と金額を明示したうえで、支払期限までに代金を支払ってもらうことを目的としています。
請求書には決まったフォーマットがないため、「何を書けばよいのか分からない」「項目の抜け漏れが不安」と感じる方も多いかもしれません。ただし、実務上は必ず押さえておくべき基本項目が存在します。
一般的な請求書に記載する主な項目は、以下のとおりです。
ここでは、それぞれの項目について、具体的な書き方のポイントや注意点を順に解説していきます。
宛名には、請求書を送付する相手の会社名や個人名を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
発行日には、請求書を発行した日付を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
請求書番号は、請求書を管理・識別するための番号です。
▼書き方のポイント
▼注意点
作成者の情報として、請求書を発行する側の会社名または氏名、住所、連絡先を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
支払い期限には、取引先にいつまでに支払いをしてもらうのかを明確に記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
振込先情報には、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
請求金額と内訳には、何に対して、いくら請求しているのかがわかるように記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
消費税の項目では、税抜金額と消費税額、税込金額がわかるように記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
特記事項には、補足的に伝えておきたい情報を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の方式として導入された制度で、正式には適格請求書等保存方式と呼ばれます。この制度のもとでは、一定の要件を満たした適格請求書(インボイス)を保存していなければ、仕入税額控除を受けることができません。
適格請求書を発行する際には、通常の請求書に記載する基本項目に加えて、法律で定められた特定の項目を必ず記載する必要があります。これらの項目が一つでも欠けている場合、適格請求書として認められないため注意が必要です。
ここでは、適格請求書に必要な以下の記載項目について、一つずつ解説していきます。
適格請求書には、発行事業者の氏名または名称と、税務署から付与される登録番号を必ず記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
取引年月日には、実際に商品を納品した日やサービスを提供した日を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
取引内容には、提供した商品やサービスの内容を具体的に記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
適格請求書では、税率ごとに区分した税込または税抜の合計金額と、適用されている税率を記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
税率ごとに区分した消費税額も、適格請求書では必須項目です。
▼書き方のポイント
▼注意点
この項目は通常の請求書における「宛名」にあたり、請求書を受け取る側(取引先)の氏名または名称を必ず記載します。
▼書き方のポイント
▼注意点
請求書の作成方法には、主にExcelやWordで作成する方法、手書きで作成する方法、デザインツールで作成する方法の3つがあります。それぞれ特徴や向いているケースが異なるため、実務シーンに合わせて使い分けることが大切です。
ExcelやWordは、請求書作成で最も一般的に使われている方法です。
▼特徴とメリット
▼注意点
▼向いているケース
請求書は、手書きで作成しても問題ありません。市販の請求書用紙を使う方法や、インターネット上で配布されているテンプレートを印刷して手書きする方法があります。
▼特徴とメリット
▼注意点
▼向いているケース
Canvaなどのデザインツールを使って作成する方法です。近年、個人事業主やフリーランスを中心に利用が広がっています。
▼特徴とメリット
▼注意点
▼向いているケース
請求書を一から作成するのは意外と手間がかかります。記載項目を調べたり、レイアウトを整えたりしているうちに、時間を取られてしまうことも少なくありません。そんなときに便利なのが、無料で使える請求書テンプレートです。
テンプレートを活用すれば、必要な項目があらかじめ整理されているため、記載漏れや書式ミスを防ぎやすくなります。ここでは、実務で使いやすい請求書テンプレートを種類別に紹介します。
一般的な取引で使いやすい、シンプルな請求書テンプレートです。個人事業主から法人まで、幅広いケースで活用できます。
インボイス制度に対応した請求書テンプレートです。適格請求書発行事業者の方はこちらを選びましょう。
請求書は一見シンプルな書類ですが、宛名や金額の記載方法、支払条件の書き方、税金や制度への対応など、確認すべきポイントがいくつもあります。これらを誤ると、差し戻しや支払い遅延につながるだけでなく、取引先の経理処理に影響を与える可能性もあります。
ここでは、請求書を発行する際に押さえておきたい代表的なポイントと注意点を解説します。
宛名や金額は、請求書のなかでも特に差し戻しや確認依頼が発生しやすい項目です。発行前に、以下の点を必ず確認しましょう。
これらを事前にチェックすることで、取引先の経理処理が滞るリスクを減らせます。
支払条件が曖昧な請求書は、認識のズレや支払い遅延の原因になります。請求書には、以下の内容をわかりやすく記載することが重要です。
振込手数料は支払う側(振込を行う側)が負担するケースが多いですが、事前に確認して合意しておくことが重要です。請求書の備考欄などを使用して、「恐れ入りますが、振込手数料は貴社にてご負担くださいますようお願いいたします。」といった形で記載します。
個人事業主やフリーランスの場合、取引内容によっては源泉徴収が必要になります。具体的には、以下の報酬が源泉徴収の対象です。
源泉徴収税額は以下の計算式で算出し、報酬額から差し引いて合計金額を計算する必要があります。
源泉徴収税額 = 支払金額(消費税を含めない金額) × 10.21%
たとえば、原稿執筆料として100,000円の報酬を得る場合、請求書には以下のような形で記載します。
小計 100,000円
消費税 10,000円
源泉所得税 -10,210円
税込合計 99,790円
源泉徴収が必要な取引であるにもかかわらず、請求書にその記載がないと、支払側の処理に支障が出る可能性があります。事前に自身の取引が対象かどうかを確認し、対象の場合は必ず記載するようにしましょう。
インボイス制度に対応するかどうかによって、請求書に記載すべき内容は大きく異なります。そのため、請求書を発行する前に自身と取引先の状況をあらかじめ確認しておくことが重要です。
確認すべき主なポイントは、以下の2点です。
自身が適格請求書発行事業者として登録しているか
取引先がインボイス対応を求めているか
まず、適格請求書を発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」のみです。登録をしていない事業者は、取引先から求められても、適格請求書を発行することはできません。
一方で、自身が適格請求書発行事業者として登録しており、かつ取引先が適格請求書の発行を求めている場合は、先述した必須項目を漏れなく記載する必要があります。
請求書への押印は法律上の必須要件ではありませんが、実務では「押印がないと受理できない」とする企業も依然として存在します。
そのため、郵送で請求書を送付する場合は、事前に押印が必要かどうかを確認しておくと安心です。押印する場合は、作成者情報の右横に押すのが一般的です。なお、個人事業主の場合は認印でも問題ありません。
請求書は、発行した側と受け取った側の双方に保存義務があります。保存方法についても、以下の点を押さえておきましょう。
保存方法を誤ると、税務調査時に指摘を受ける可能性があります。自社もしくは自身の保存方法がルールに沿っているかを一度確認しておくと安心です。
請求書は作成するだけでなく、どの方法で取引先に送付するかも重要なポイントです。郵送・FAX・メールなど、送付手段によって必要な準備や注意点、適した取引先や場面が異なります。
ここでは、代表的な送付方法ごとに、特徴と注意点を整理して解説します。
紙の請求書を郵送する方法は、今でも多くの企業で採用されています。特に、原本の提出を求められる取引先や公的機関との取引では一般的です。
郵送する際は、以下の点を押さえておきましょう。
また、重要な書類の場合は、簡易書留や特定記録郵便を利用すると、郵送事故の防止につながります。
FAXによる送付は、すぐに相手へ届けられる点が大きなメリットです。急ぎの請求や、FAXでのやり取りが慣習となっている取引先では、現在も利用されることがあります。
一方で、以下の点には注意が必要です。
また、FAXは画質が落ちやすいため、小さすぎる文字や細かい表は避け、金額や数字がはっきり読めるレイアウトにするなどの工夫が重要です。
現在、最も一般的なのが、請求書をPDFにしてメールで送付する方法です。郵送に比べてコストや手間がかからず、到着も早いため、多くの取引で利用されています。
メールで送付する際は、以下の点を意識しましょう。
さらに、誤送信を防ぐために宛先(To/Cc/Bcc)の確認を徹底することや、必要に応じてパスワード付きPDFを利用するなど、セキュリティ面への配慮も欠かせません。
請求書は内容が正確であることが最優先ですが、同時に「見やすさ」や「分かりやすさ」も重要です。その点でおすすめなのが、Canva(キャンバ)を使った請求書作成です。
Canvaは、デザインの専門知識がなくても使えるオンラインデザインツールで、請求書向けのテンプレートも豊富に用意されています。項目があらかじめ整理されたレイアウトを使うことで、記載漏れやレイアウト崩れを防ぎやすく、作業時間も大幅に短縮できます。
特に、以下のような人にはCanvaが向いています。
以下では、請求書をCanvaで作成する方法をご紹介します。
Canvaには豊富なテンプレートが用意されているので、まずは「テンプレート一覧(新しいタブまたはウィンドウで開く)」から目的に合ったテンプレートを選び、編集画面を開きましょう。
編集画面では、テンプレート内のテキストを自由に編集できます。宛名や作成者情報、請求金額、振込先情報などを入力するだけで、請求書を簡単に作成可能です。また、自社ロゴを追加するなど、デザインをカスタマイズすることもできます。
さらに、Canvaではリンクを共有することで、他のメンバーと共同編集することも可能です。社内で内容を確認したり、修正を依頼したりする際にも便利です。
完成した請求書は、PDF形式でダウンロードでき、そのまま電子請求書としてメール送付できます。郵送の手間やコストを抑えられる点もメリットです。
なお、請求書以外のデザインの作成方法や、おしゃれなデザインを作るためのヒント・コツについては、以下の記事で詳しく紹介しています。ぜひあわせてご覧ください。
請求書は、取引内容や金額を正式に伝えるための重要な書類です。決まったフォーマットはありませんが、宛名や金額、支払期限など、押さえるべき基本項目を正しく記載することが求められます。
また、インボイス制度への対応や、源泉徴収の有無など、立場や取引内容によって注意点も異なります。テンプレートやツールを活用しながら、ミスや手間を減らす工夫をすることで、請求業務は大きく効率化できます。
請求書の書き方や運用については、実務の中で細かな疑問が生じやすいものです。ここでは、特によくある質問とその回答を紹介します。
請求書の発行タイミングは、契約内容や取引形態によって異なります。
重要なのは、事前に取引先と発行タイミングをすり合わせておくことです。契約内容に基づいて発行することで、認識のズレや支払い遅延を防げます。
請求書は、必要に応じて再発行することが可能です。実務では、以下のような理由で再発行が行われるケースがあります。
再発行する際に重要なのは、旧請求書との混同を防ぐことです。そのため、請求書の表記や管理方法について、以下の点に注意する必要があります。
また、取引先が迷わず処理できるよう、再発行である旨を一言添えて送付すると安心です。たとえば、次のような文面が考えられます。
先にお送りした請求書に誤りがございましたため、訂正のうえ再発行いたします。
お手数ですが、旧請求書は破棄していただきますようお願いいたします。
このように対応しておくことで、二重計上や支払いミスといったトラブルを防ぐことができます。